二酸化炭素排出量とは?原因や削減の取り組み、今後について解説

二酸化炭素排出量とは?原因や削減の取り組み、今後について解説

  • icon
  • icon

あらゆる場面で見かける二酸化炭素排出量という言葉ですが、どのようなものかご存じでしょうか。この記事では、二酸化炭素排出量に関する基本的な知識から、増える原因、削減のために日本や世界がどのような取り組みをしているのかをご紹介します。合わせて、個人ができる取り組み、このまま増え続けた場合地球に及ぼす影響など、私たちの直面する現状を見ていきましょう。

二酸化炭素排出量とは?

「二酸化炭素排出量」とはその名の通り、「二酸化炭素(CO2)」が排出された量のことです。そもそも二酸化炭素自体は有毒な気体ではありませんが、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの1つです。温室効果ガスとは、大気中に含まれる二酸化炭素、メタンガス、フロン類の総称をいいます。これらは、地球内に熱を閉じ込め温める働きをし、気温を上昇させます。

つまり、地球温暖化抑制には温室効果ガスの排出量の削減が重要です。なかでも二酸化炭素の排出量が最多となっており、排出量の削減が急がれています。

二酸化炭素排出量が増えている原因

二酸化炭素排出量の増加には主に2つの原因があります。

1つ目は、「化石燃料」の使用です。化石燃料とは、石炭、石油、天然ガスなどの総称です。これらを燃やすと、二酸化炭素が発生します。化石燃料の多くは発電に使用され、世界の化石燃料由来の電気は61.4%にもなります。そしてご存じの通り、照明や家電製品は電気をエネルギーとしています。また、自動車も化石燃料のガソリンを燃やして動かしています。つまり、私たちの生活が二酸化炭素の排出に大きく影響しているのです。

2つ目は、森林面積の減少です。木は二酸化炭素を吸収し、酸素を排出します。そのため森林は、地球温暖化防止の役割を果たしています。しかし、1990年から2020年の間に森林面積は約592万ha減少しました。これ以上減少が進めば、地球温暖化はますます深刻化するでしょう。

ほかにも製造業などの産業や、廃棄物処理など多様な要因が積み重なり、二酸化炭素排出量の増加につながっています。

日本における二酸化炭素排出量と推移

日本における二酸化炭素排出量の推移を見てみましょう。2020年度の日本の温室効果ガス排出量は11億4,900万トン、そのうち二酸化炭素の内訳は10億4,400万トンとなっています。膨大な量に見えますが、前年度から6,370万トン(5.8%)減少しました。

排出量を抑える働きの結果も出てきており、2020年度の二酸化炭素排出量は2005年度比で2億4,960万トン(19.3%)、2013年度比で2億7,360万トン(20.8%)削減されました。都道府県別の内訳は「千葉県」がもっとも多く、続いて「愛知県」となっています。ここから排出量は人口と比例するわけではなく、工場や車移動など人々の生活様式が複雑に関連していることが分かります。

世界の二酸化炭素排出量ランキング

続いて国別の二酸化炭素排出量ランキングをご紹介します。ランキングは以下の通り、一番二酸化炭素排出量の多い国は「中国」、「日本」は5番目に多いという結果となっています
順位 国名 2018年度の二酸化炭素排出量(単位:百万トン)
1 中華人民共和国(中国) 9,570.8
2 アメリカ合衆国(米国) 4,921.1
3 インド 2,307.8
4 ロシア 1,587
5 日本 1,080.7
6 ドイツ 696.1
7 大韓民国(韓国) 605.8
8 イラン 579.6
9 カナダ 565.2
10 インドネシア 542.9
傾向としては、中国やインドといった経済発展の著しい「新興国」の二酸化炭素排出量が増加しています。原因は、人口が多く一人当たりのエネルギー消費量が増大していたり、経済成長に伴う産業の活性化から二酸化炭素排出量が増えたりしているためだと考えられます。いずれにせよ、全世界の排出量に大きなインパクトを与える結果となっています。

しかしながら、これら新興国の経済発展を抑制できません。そのため、温室効果ガスの排出抑制と経済発展の両立が求められます。これを実現するには先進国との連携、協力が不可欠だといわれています。

一人当たりの二酸化炭素排出量と、削減のためにできること

二酸化炭素排出量は大きな排出元があるわけでなく、生活のなかで排出される二酸化炭素量の積み重ねです。では、一人当たり1日に排出する二酸化炭素量はどれくらいになるのでしょうか。

国民一人当たり1日に排出する二酸化炭素量は、平均6kgといわれており、年間8〜10トンにもなります。一方で2050年までに国際目標を達成するためには、一人当たりの年間排出量を0.7トンまで削減しなければなりません。今の生活では、到底達成できない目標です。

では私たちはどのような取り組みをすればよいのでしょうか。
まず、家で使用する電気を、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーに切り替えた場合、年間一人当たり1.2トン程度の削減が見込まれます。続いて、自動車を日常的に使う方が電気自動車(EV)に切り替えることで、年間一人当たり0.5トン程度の削減が見込まれます。最後に、食生活を菜食に切り替えることで、一人当たり0.3トン程度の削減になるといわれています。

世界の二酸化炭素排出量削減への取り組み

世界の125ヵ国・1地域が二酸化炭素の排出量と吸収量を均衡させ、実質、二酸化炭素排出量0を目指す「カーボンニュートラル」の実現を宣言しています。では、そのために世界ではどのような取り組みをしているのでしょうか。

国連気候変動枠組条約締約国会議

「国連気候変動枠組条約締約国会議」(「COP」)とは、気候変動に関する条約を結んだ国々による会議のことです。1992年、大気中の温室効果ガス濃度を安定化させることを目標に、国連気候変動枠組条約が採択され、197ヵ国がこれに合意しました。この条例に基づき開催された会議が、国連気候変動枠組条約締約国会議です。

会議では、気候変動問題は各国が協力して取り組む事項と明言されています。それに基づき、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの削減に向けた取り組み状況や課題、現状が会議内で報告されます。この会議結果をもとに、各国が自国の二酸化炭素排出量削減の取り組みを推進していくのです。

パリ協定

「パリ協定」とは、国連気候変動枠組条約を達成するために定められた具体的な取り組みのことです。

2020年までの取り組みは「京都議定書」と呼ばれ、聞き覚えのある方も多いでしょう。そして、京都議定書に代わる2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みを「パリ協定書」といいます。パリ協定では「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という目的で国際的な取り組みを定めています。

これをもとに日本では「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」、「今世紀後半のできるだけ早期に脱炭素社会を実現することを目指す」という2つの目標を掲げています。

グリーンイノベーション

パリ協定で定められた目標を達成するためには、多様な課題があり、従来のやり方では難しいとされています。そのため、既存の方法には縛られない新しい取り組みが必要なのです。一方で、気候変動問題への取り組みを重視し、経済成長を止めてよいというわけではありません。そこで、気候変動問題に取り組みつつ、経済成長を同時に行う「グリーンイノベーション」が注目されています。

グリーンイノベーションとは、カーボンニュートラルを実現するため、政府、金融、産業、研究者などさまざまな分野が協力し、変革を生み出すことで世界的な課題解決に取り組む仕組みのことです。2019年には「グリーンイノベーション・サミット」が開催され、各分野間の連携を強めるためさまざまな取り組みが行われています。

今後二酸化炭素排出量はどうなっていくのか

各国でさまざまな取り組みが行われているように、私たちも二酸化炭素を排出しない暮らしを主体的に考えなければなりません。

もし、国民の意識が変わらず二酸化炭素の排出量が増え続けた場合、地球温暖化による気温が2℃上昇し、夏の北極海で海氷が消えるといわれています。すると海水が増え陸地がなくなり、異常気象が発生します。さらに伝染病が増え、食糧難に陥り、今までの生活を送ることは困難となるでしょう。現在、日本の二酸化炭素排出量は減少傾向にあります。しかし、目標値までの道のりはまだまだ遠く、企業や地域、国民ひとり一人の主体的な取り組みが求められています。今後も人類が生活できる地球を守るために、ますます個人の取り組みが重要となるでしょう。
top