フードロスとSDGsの関係とは?現状問題と私たちにできること

フードロスとSDGsの関係とは?現状問題と私たちにできること

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日本では、年間で東京ドーム約5つ分もの食品が廃棄されている現状をご存じですか?まだ食べられる食品を捨てるフードロスは世界的にも問題視され、SDGs(持続可能な開発目標)にも盛り込まれました。この記事では、フードロスの現状やSDGsとの関係について解説します。私たちが今日からできる取り組みも紹介していますので、ぜひ参考にしてくださいね。

フードロスとは?SDGsとの関係

フードロス
「フードロス」とは、食べられるのに捨てられてしまう食品のことです。食べられる食品は、原材料の生産や調理をする過程でたくさんのエネルギーを使っています。食品が捨てられてしまうと、廃棄のためにさらなるエネルギーや費用が必要です。
そのため、フードロスは資源の無駄遣いが二重三重に発生してしまうという大きな問題を抱えています。フードロスとなった食品がゴミとして燃焼すると温室効果ガスが発生し、地球温暖化の促進に繋がってしまいます。

また、フードロス問題は、とくに食べ物がたくさんある先進国で多く発生しています。2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)でも、わたしたちが解決すべき社会課題の一つとしてフードロスが取り上げられました。フードロス問題に取り組むことは、エネルギーや温室効果ガスの問題に加え、SDGsの目標「2.飢餓をゼロに」の目標達成にも重要だと考えられています。

日本と世界のフードロスの現状

フードロス 現状 ゴミ箱の食材
フードロス問題は日本も例外ではありません。日本と世界が抱えるフードロス問題の現状をそれぞれご紹介します。

日本のフードロスの現状

2016年のデータをもとにした農林水産省の試算によると、日本でのフードロスは年間で643万トンです。これを換算すると、日本国民1人当たりで年間で約50kgもの食品を廃棄していることになります。

ちなみに、2016年における1人当たりのお米の消費量は、年間で54.4kgでした。これを考慮すると、お米の消費量と同じだけのフードロスが発生していることになります。

フードロス量の内訳も見てみましょう。年間のフードロス643万トンの内、家庭が占める割合は291万トン、食品メーカーや小売店・飲食店が占める割合は352万トンです。調査では家庭での食事よりも、外食でのフードロスの割合が大きいことがわかっています。

さらに、食品メーカーや飲料メーカー、農水産物の生産者、食品卸業者ら事業者側でもフードロスは発生しています。日本は、世界でも有数の食料輸入国でありながら、これだけたくさんのフードロスを発生させているのは大きな問題です。

世界のフードロスの現状

「世界の食料ロスト食糧廃棄(2011)」によると、世界では生産された食品の3分の1が廃棄されています。その量は1年間で、約13億トンにのぼります。

この原因の一つは、発展途上地域における食料の劣化です。発展途上地域では保存や貯蔵するための設備が足りないため、いくら生産しても食料が劣化してしまいます。その結果、本来は食べられるはずだった食品が食べられなくなり、廃棄されてしまうのです。

食糧の高騰と各国の経済状況においても、フードロスへの影響があると考えられています。たとえば穀物の価格が上昇すると、経済的に貧しい国は輸入が難しくなります。その結果、穀物はその国へ届かなくなってしまうのです。

反対に、豊かな国では過剰に穀物が輸入され、余った分は廃棄されてしまいます。同じフードロスでも、経済的に貧しい国と豊かな国で起こるフードロスは理由が異なります。輸入量の多い先進国のフードロスを削減すれば、世界の食糧事情が改善される可能性もあるのです。

フードロスはなぜ発生しているのか

「もったいない」とも思えるフードロスはなぜ発生してしまうのでしょうか。この原因は、事業者と家庭でそれぞれ異なります。

まず、飲食店や食品メーカーなどの事業者側では、製造日から賞味期限までの期間を3分の1ずつにわけ、残り3分の1の期間になったところで店頭から撤去して廃棄するという「3分の1ルール」が習慣化しています。また、食品には消費期限や賞味期限が定められているため、時期がきたら廃棄しなければなりません。

さらに、わずかな傷や容器のへこみなど規格外に当たる食品は、産業廃棄物として処分されてしまいます。これらの習慣やルールによって、フードロスが発生しているのです。近年はこれらが問題視され、日本政府には「食品ロス削減関係省庁等連絡会議」が設けられました。NPO法人などの団体によるフードバンク活動も盛んになっています。

次に、家庭にも目を向けてみましょう。家庭におけるフードロスの原因は、食べ残しや調理ミス、食品の保管ミスなどです。これらは適切な調理や管理をすれば十分防げる可能性があります。
フードロスの改善は、SDGsにも示される通り世界的な問題です。根本から原因を解決するには、事業者から消費者まで無駄を無くすシステムの構築や、消費者の意識の改革が求められます。

SDGs目標12「つくる責任つかう責任」とは?

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フードロスの問題は、SDGs「12.つくる責任つかう責任」において、さらに明確な目標が提示されています。「12.つくる責任つかう責任」は「生産側でも消費側でも社会や環境へ責任のある行動を取ろう」という目標です。

目標12の下に細かく設定されている達成目標の3では、以下のように示されています。
2030年までに、お店や消費者のところで捨てられる食料(一人当たりの量)を半分に減らす。また、生産者からお店への流れのなかで、食料が捨てられたり、失われたりすることを減らす。
日本だけでなく、世界の人々が安心して暮らせる持続可能な社会の実現に向けて、フードロスも世界で解決すべき共通課題となっています。

フードロスと飢餓が同時に起きている

食べられるものが捨てられてしまうフードロス問題。日本でも深刻な問題として、課題解決に向けたさまざまな取り組みが行われています。

一方で、世界的に見ると、フードロスとは真逆とも思える「飢餓」も、深刻な問題です。「飢餓」とは、必要な分の食べ物が得られず栄養が失調し、健康が損なわれる状態を指しています。

日本では耳馴染みなく感じるかもしれませんが、世界に目を向けると問題は深刻です。今まさに、飢餓に苦しんでいるとされる人々は8億人にも上るといわれています。

飢餓の問題を解決するには、食料の安定供給が欠かせません。発展途上国において、十分な量の作物を継続的に収穫できる環境の整備が必要となります。さらに、収穫に加えて、それら食料を必要な場所に運搬できる電力や交通網などのインフラの整備も行わなければなりません。

ただし、この問題を経済的に余裕のない発展途上国が、みずから取り組むのは難しく、莫大なお金と時間がかかります。先進国などの国際的な協力体制なくして、飢餓という問題の解決はできません。

企業でのフードロス削減への取り組み

このような世界情勢を受け、日本企業でもフードロス削減への取り組みが行われています。その一つは、食品を有効活用できるフードバンクを利用した食料の寄付です。

フードバンクとは、事業でどうしても発生してしまう食品廃棄物を企業が寄付し、必要な人のもとへ届ける活動や団体を指します。食品廃棄物といっても、包装や印字の規格外などで流通できない品のため、安全に飲食できるものばかりです。

企業や飲食店がフードバンクへ寄付し、フードバンクからホームレスや児童養護施設といったところへ届ける仕組みは、本来捨てられていた食品を有効活用できます。企業や飲食店においては、廃棄コストを減らせるうえ、組織活動の社会的責任(CSR)を果たしイメージアップにもつながるというメリットもあります。

フードロス削減のために私たちができること

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フードロス削減のためには、私たちが家庭で取り組めることもたくさんあります。ほんの少しの取り組みがフードロス削減の第一歩です。できそうなことから、ぜひトライしてみましょう。

食べる分だけ購入する

誰でも簡単にできて取り組みやすいのが、余分な食材を購入しないことです。自宅で食べきれる量をきちんと計算し、期日を決めて使いきりましょう。安い食材の大量購入は、フードロスのリスクを高めます。

適切に保存して食材を長持ちさせる

食材が長持ちすれば、食べられる期間が長くなるため、フードロス削減につながります。食材ごとに正しい保存方法を学び、冷蔵庫に残っている食材で上手に料理を作りましょう。賞味期限と消費期限の違いを把握して管理することも大切です。

買い物をする際は、食材がいつまで使えるか意識して購入しましょう。食材は長持ちするほど無駄になりにくいため、保存できるものを上手に取り入れてください。すぐに痛む食品は、今日、明日で使いきれるか考えてから買いましょう。

安易に食材を無駄にしないための工夫

「いらないな」と思った食材でも、使い方次第ではフードロスを回避できる場合があります。買いすぎてしまった食材や大量に頂いた野菜があるときは、友人や近所の方におすそ分けしましょう。また、長期保存が可能な食品は、前述のフードバンクのように食料支援をしている団体へ寄付するのもおすすめです。

このように、フードロスを解決するためには、わたしたち一人一人の心がけも大切です。外食で食べきれない場合は持ち帰りを相談したり、冷蔵庫の中身だけで料理する日を作ったりするなど、日常でできる工夫をしてみましょう。
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