ウェルビーイングとは? 注目されている理由から幸福な気持ちで生きるヒントまで

ウェルビーイングとは? 注目されている理由から幸福な気持ちで生きるヒントまで

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「ウェルビーイングって、聞いたことがある気がするけど、どういうこと?」と思う方もいるでしょう。新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、わたしたちのライフスタイルに変化が生まれたことがきっかけとなり、「ウェルビーイング」(well-being)に注目が集まっています。今回はウェルビーイングの意味や指標、そしてウェルビーイングに生きるためのヒントまでご紹介します。

ウェルビーイングとは?

初めて「ウェルビーイング(well-being)」という言葉が使われたのは、1946年の世界保健機関(WHO)の憲章の前文でした。その後、世界中で使われる言葉となっています。ウェルビーイングは単に「幸福」と訳されることもありますが、その言葉が示す意味は「身体的・精神的・社会的に良好な状態にある」という概念です。

少し具体的に例を挙げてみましょう。宝くじに当たったり、おいしいものをたくさん食べたりして幸せを感じる。これらは瞬間的な幸せですよね。それに対して、ウェルビーイングはもっと持続的なものです。特別裕福ではなくても働いて得たお金のなかで、きちんと生活ができていること、毎日健康に良い食事を残さず食べること。そのような行動によって、充足感を得ることがウェルビーイングの示す幸福の中身の一端です。

日本の厚生労働省でも、ウェルビーイングについてWHOの憲章とほぼ同じように定義しています。「個人の権利や自己実現が保障されること」という追加がある点だけ、異なっています。日本の経済発展を考える上でも、ウェルビーイングが重要な位置づけと認識されているのです。

ウェルフェアとの違いは?

ウェルビーイングと似た言葉として、ウェルフェアという言葉を耳にすることもあるかもしれません。ウェルフェアは「福祉」と翻訳されることもあり、社会では主に「福利厚生」のことを指す言葉として使われています。

ウェルビーイングな状態になるためにウェルフェアがある、といえるでしょう。つまり、ウェルビーイグが目的で、ウェルフェアが手段であると言い換えられます。

ちなみに、近頃では「福祉」をウェルビーイングと訳す事例も出てきました。福祉には「社会的弱者を保護する」というイメージがありますが、そうではなく、彼らの望むライフスタイルを実現していくべきという考えにシフトチェンジされ始めていることの表れです。

ウェルビーイングが注目されている理由

ウェルビーイングが注目されていることは先にお伝えした通りですが、その理由について詳しく解説していきます。

1.多様性を尊重する時代へ

全世界的に社会の成熟とグローバル化が進んでいる昨今、価値観や生き方が多様化しています。そのなかで、人種や宗教、セクシャリティやワークスタイルなどさまざまな面でマイノリティの人たちを尊重し、彼らが暮らしやすい社会を目指そうとする動きが活発です。

「幸せ」についても多様化しており、みなが経済的な豊かさや大企業への就職を求める時代ではなくなってきています。つまり、「お金を持っていること」などの具体的な価値観ではなく、個人や国、地域ごとの考え方、年齢などを越えた価値観によって「幸せ」が定義される必要が出てきたのです。それがウェルビーイングが注目されている背景の一つです。

2.働き方の価値観が変化

価値観が多様化してくると、それは働き方にも影響を及ぼすようになってきました。今までのように定時出社、定時退勤または残業をして自分の好きなことをする時間もない…という生活ではなく、プライベートを大切にする「ワーク・ライフ・バランス」を重視する人が若い人を中心に広がっています。デジタル技術の進歩や新型コロナウイルス感染症の拡大により、在宅ワークが急速に広まったことも、この流れを加速させています。

「もう、高い家賃を払って都心にある会社のそばに住まなくても良い」と考えている人も増えたでしょう。新型コロナウィルスの拡大によって自分や身近な人たちの幸福とは?という点について、考える時間を持てたことが、ますますウェルビーイングが再注目された理由のひとつです。

3.企業の人材確保・生産性向上のため

従業員たちがワーク・ライフ・バランスを意識するようになると、彼らはより自分の生き方にフィットする企業を探して転職するようになってきました。ただでさえ慢性的な人手不足に陥っている企業にとって、これは大きな痛手です。

今後、人口減少、働き手減少となっていくことから、人材確保のためには、働き手が求めるウェルビーイング重視の労働環境を整えることが必要不可欠となっています。それは、テレワークや副業をOKにしたり、キレイなオフィスなどの労働環境を整備するといったことです。

また、年功序列をやめ、若くても途中入社であっても、優秀な人にチャンスが与えられる環境も必要です。そのようにして、優秀な人材を確保し、生産性を向上させることが企業経営に求められています。

4.SDGsでも言及された

SDGsの3つ目の目標として「GOOD HEALTH AND WELL-BEING(すべての人に健康と福祉を)」が掲げられています。そのなかでは、主に体の健康に関することが明記されています。しかし、身体的に健康な生活を送れることは、当然ながら心理的な健康にもつながっています。

また、同じくSDGsの目標として4番目に掲げられている「質の高い教育をみんなに」というテーマもウェルビーイングの向上に役立つと考えられています。世界最大のシンクタンクであるOECDも、近未来の教育の重要キーワードとして「ウェルビーイング」を盛り込んでおり、ウェルビーイングと教育の関係に注目しています。

ウェルビーイングを測る指標はどんなものがある?

キャリア 生計のための仕事だけではなく、育児やボランティアなども含めて一日のうちでもっとも時間を費やしていることについてのウェルビーイング。
ソーシャル 信頼や愛情でつながっている人間関係があるかどうか。
フィナンシャル 安心して満足のいく生活ができるように、資産を管理・運用できているかどうか。
フィジカル 自分のやりたいことややるべきことをこなせる健康な状態、エネルギーがあるかどうか。
コミュニティ 地域とつながり、関わっているという感覚があるかどうか。
これらすべての項目について、満たされているかどうかを評価するのが、ギャラップ社の方法です。この5つの要素について判断するため、「体験」と「評価」の2つの軸を設けています。体験については、ポジティブ体験とネガティブ体験について5つずつ質問をします。
ポジティブ体験 ネガティブ体験
よく眠れた 心の痛み
敬意を持って接された 心配
笑った 悲しい
学び/興味 ストレス
歓び 怒り
そして、「評価」では自分の人生を10段階で評価してもらいます。体験と自己評価を合わせることで、より現実に近い幸福度を判定できるという考え方です。

2.世界幸福度ランキング

世界幸福度ランキングは、2012年から国連の持続可能な開発ソリューションネットワーク「SDSN」によって発表されています。先にご紹介したギャラップ社の収集データを活用しながら、年間で約1,000件、3年分で約3,000件のデータを元に幸福度を測定しています。さらに、国連独自の要素として、以下の6つの項目についても加味しています。

・各国の・1人当たり国内総生産(GDP)
・社会的支援の充実(社会保障制度など)
・健康寿命
・人生の選択における自由度
・他者への寛容さ(寄付活動など)
・国への信頼度

毎年3月末頃に発表されるこのランキング。以前ブータンが発展途上国ながら幸福度が世界一となったのと対称的に、日本は毎年幸福度が低いことでも注目されてきました。ちなみに、2022年度は1位がフィンランド、2位デンマーク、3位アイスランドと上位は北欧諸国が多く並んでおり、日本は54位という結果で、昨年と比べると2つ順位を上げました。

上記6つの項目のうち、日本では国民一人あたりのGDPと健康寿命は高いスコアが出ます。しかし、他者への寛容さがほとんどありませんでした。SNS上での誹謗中傷が問題となることなども、その一例といえるでしょう。ひとりひとりが自分以外の人、自分とは違う考えを持ち、違う暮らしをしている他者への寛容さを持てれば、それは自分自身の幸福感につながるはずです。

ウェルビーイングを実現するための方法は?

ウェルビーイングを叶えるための取り組みは、多くの企業でも行われています。それぞれ、会社の特徴に合った内容で社員に福利厚生としてサービスを提供しており、味の素では健康管理アプリを使い、個人の状況に応じた健康・栄養指導が受けられます。アシックスには、仕事の前後にスポーツを楽しめるアトリウムがあります。デンソーには、産業医や上司が連携して長期休業した社員をサポートする「復職支援制度」があります。

では、わたしたち個人では、どのようにウェルビーイングを実現できるのでしょうか? 続けて、紹介します。

1.ストレスチェックを受けてみる

ウェルビーイングを向上させるためには、まず現状を知ることからスタートしてみましょう。厚生労働省のものをはじめ、インターネットで簡単に受けられるストレスチェッカーがあるので、トライしてみてください。

もし、ストレス度が高いようならば、マインドフルネスや瞑想、写経などを取り入れてみるとストレス解消になり、おすすめです。

2.人間関係や仕事を見直す

ストレスが多い人間関係や仕事のために、本来の能力を発揮できないのはもったいないですね。嫌な人間関係からは卒業したり、職場環境の改善要望を上司に伝えるなど、行動に起こしてみてください。

3.心が豊かになる生活や消費行動を取り入れる

ウェルビーイング・エコノミーという言葉を聞いたことがあるでしょうか。「地球資源を守りつつ、富の公平な分配を目指そう」という考え方で、SDGsとも相性が良いです。

自然を壊さず、自然とともに過ごしたり、持続可能なものを消費する。また、地域社会に積極的に参加するといった行動を取ると、ウェルビーイングの実現につながります。そのような日々の行動で、ウェルビーイングは向上させられるので、ぜひ試してみてください。
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