GHGとは? 温室効果ガスの削減目標に向けて取り組んでいること

GHGとは? 温室効果ガスの削減目標に向けて取り組んでいること

  • icon
  • icon

2016年に「パリ協定」が発行されたことで世界各国がエネルギー問題や経済活動の脱炭素化に取り組んでいます。それらの環境的な取り組みにおいて、頻出する単語のひとつが「GHG」です。この記事では、GHGの意味や日本を含む世界の取り組み目標と現況、私たちが日常生活で意識すべきことについてご紹介します。

GHGとは?

GHGとは「Greenhouse Gas」を略した環境用語であり、温室効果ガスのことを指しています。最も代表的なのは二酸化炭素ですが、そのほかにも、メタン、亜酸化窒素、ハイドロフルオロカーボン類、パーフルオロカーボン類、六フッ化硫黄を含めた6種類がGHGに指定されています。

GHGは、地表から放射された赤外線の一部を吸収し、熱が宇宙空間に放出されるのを妨ぐ性質を持っています。そのため、大気中のGHGが増加すると「地球温暖化」を進行させるといわれているのです。

地球温暖化が進むと、気候変動や生態系の破壊だけでなく、洪水や干ばつ、山火事の多発など、私たちの生活や経済活動にも直接影響を及ぼす事態が頻発すると予想されています。GHGの削減は世界的な課題となっており、各国が削減に向けて取り組んでいます。

京都議定書やパリ協定の内容は?

京都議定書

地球温暖化を防止するには、各国が足並みを揃えて世界規模で対策に当たる必要があります。そこで、各国がそれぞれ取り組んでいたGHG削減対策を取りまとめるために発効されたのが「京都議定書」です。

京都議定書は、正式名称を「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書」といいます。1997年に京都で開催された「第3回気候変動枠組条約締約国会議」において採択されました。その中では、前述したGHG6種類について「先進国全体の排出量を1990年に比べて少なくとも5%削減する」という目標を掲げています。

京都議定書は、先進国に法的拘束力のある数値目標を求めるなど歴史的意義のある取り組みでしたが、途上国に削減を義務付けていないことが問題視されました。採択された1900年代後半は、主に先進国による二酸化炭素の大量排出が注視されていたことから、先進国のみが対象だったのです。しかし、2010年以降には途上国の二酸化炭素排出量も急増しています。
さらに、2001年にはアメリカが京都議定書からの脱退を表明しました。二酸化炭素排出量で世界第2位となっているアメリカが脱退したことで、数値目標の達成目途がつかなくなってしまったのです。

パリ協定

このような背景から、京都議定書に代わる新たな枠組みが必要となりました。そこで登場したのが「パリ協定」です。

「パリ協定」は、2015年に開催された「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)」で採択され、2016年に発効されました。歴史上初めて、途上国を含む全ての参加国に削減努力を義務づける取り組みです。その中では、次の2つの目標が掲げられています。

1、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
2、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と吸収量のバランスをとる

世界の温室効果ガス(GHG)排出量は?

世界の温室効果ガス総排出量は、2019年の時点で約335億トンでした。国別の数値を見ると、上位から中国・アメリカ・インド・ロシアと続き、日本は5番目に排出量が多い国となっています。
続いて、国別の一人当たりの排出量を見てみましょう。数値が最も大きいのがアメリカの14.5t/人で、日本は3番目に大きい8.4t/人です。先進国は一人当たりの排出量が途上国を大幅に上回っていることがわかります。
しかし、途上国は急激な経済発展の渦中にあり、排出量も急増しつつあります。先進国と途上国が連携しながら、温室効果ガスの排出抑制と経済発展を両立した社会システムを形成していく必要があるといえるでしょう。

世界の温室効果ガス(GHG)削減の達成度は?

パリ協定では、各締結国が策定した貢献案に基づいて、GHG削減に向けた様々な取り組みが進められています。主要国の中期目標と2016年時点での進捗状況について、資源エネルギー庁は次の通りまとめました。
日本
・目標:2030年度に26%のGHG削減(2013年度比)
・進捗:2016年度時点で7%の削減実績。目標ラインと同水準で、最近の動きは削減の傾向。
 
英国
・目標:2030年度に57%のGHG削減(1990年比)
・進捗:2016年時点で41%の削減実績。目標ラインと同水準で、最近の動きは削減の傾向。
 
米国
・目標:2025年に26~28%のGHG削減(2005年比)
・進捗:2016年時点で12%の削減実績。目標ラインから上ぶれ、最近の動きは削減の傾向。
 
フランス
・目標:2030年に40%のGHG削減(1990年比)
・進捗:2016年時点で18%の削減実績。目標ラインから上ぶれ、削減傾向は横ばい。
 
ドイツ
・目標:2030年に55%のGHG削減(1990年比)
・進捗:2016年時点で27%の削減実績。目標ラインから上ぶれ、削減傾向は横ばい 。

「目標ライン」と同水準を維持し、順調に削減を進められているのは日本と英国です。一方、米国、フランス、ドイツは目標ラインを上回っており、排出量に対して削減が追いついていない状況がうかがえます。

また、この目標を達成する上で重要な指標となるのが「エネルギー供給の低炭素化」と「省エネルギー」です。こちらについても、省エネルギー庁の資料でまとめられています。
日本
・非化石電源比率:東日本大震災後の原子力発電所の停止によって12%まで低下したものの(2012年度)、2017年度には19%まで回復。
・エネルギー消費:過去も現在も削減傾向。
 
英国
・非化石電源比率:一定の原子力発電比率を維持しつつ再エネ比率を伸ばしていることから、2010年比で約2倍(47%)に増加。火力も天然ガスへの転換を図っている。
・エネルギー消費:過去も現在も削減傾向。
 
米国
・非化石電源比率:一定の原子力発電比率を維持しつつ再エネ比率を伸ばしていることから、2005年の28%から2016年の34%まで増加。火力はシェール革命によってガス価格が下がっており、天然ガスへの転換を図っている。
・エネルギー消費:過去も現在も横ばい。
 
フランス
・非化石電源比率:すでに電力供給の約9割が非化石電源でおこなわれているため、エネルギー供給の低炭素化をはかる余地が限られており、省エネルギーが必要。
・エネルギー消費:現在横ばい傾向。
 
ドイツ
・非化石電源比率:再エネ比率が2010年比で約2倍の30%に増加しているものの、原子力発電比率が低下しているため、現在は約4割と横ばい。
・エネルギー消費:現在横ばい傾向。

日本と英国は、再エネ電力やガスへの燃料転換や省エネルギーの取り組みをバランスよく進められている様子です。そのため、目標ラインに向けて順調に進展できていることが分かります。

ニ酸化炭素排出量を削減することが重要

パリ協定では「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて1.5℃より低く抑える努力をする」という目標が立てられました。日本は、この達成に向けた長期目標として「GHGの排出量を2050年までに80%削減する」と掲げています。この目標を達成するためには、どのような取り組みが必要になるのでしょうか。

GHGに指定されている6種類の物質の中でも、排出量の大半を占めているのが二酸化炭素です。地球温暖化への影響が最も大きいため、温暖化防止においては二酸化炭素の排出量を減らすことが最も重視されています。

それでは、日本の二酸化炭素はどのように排出されているのでしょうか。「2020年度の二酸化炭素排出量内訳」を見ると、次のようになっています。

・エネルギー転換部門:40.4%
・産業部門:24.3%
・運輸部門:17.0%
・業務その他部門:5.5%
・家庭部門:5.3%

この通り、年間10億トンを超える排出量のうち8割以上を産業関連の部門が占めていることがわかります。このことから、「80%削減」という高い目標を達成するための取り組みとしては、次のようなものが考えられます。

・業務用・家庭用問わず、社会インフラをオール電化や水素利用などのクリーンエネルギーに入れ替える
・運輸部門のエネルギーを、すべて再生可能エネルギーに切り替える
・発電を100%非化石にする
・農林水産業や鉄鋼産業、化学産業など一部の産業分野を除いて基本的に温室効果ガスを排出させない

この通り、どれも簡単に実現できる取り組みではありません。しかし、このような根本的な解決に挑戦しなければ「80%削減」という高い目標は達成できないのです。また、これらの取り組みは現在の社会で流通している技術だけでは実現が難しく、技術分野のイノベーションも必須となるでしょう。

現状、2050年のカーボンニュートラルにコミットした途上国のうち、ほとんどが国連に長期的な排出量削減目標を提出しておらず、経済成長にともなってGHG排出量も増え続ける見込みです。途上国の経済成長を損なわず、GHG削減との両立が可能になるエネルギー技術の革新が、これまで以上に求められています。

家庭での削減も重要

GHGの削減目標を達成するには、産業分野の取り組みに任せず、家庭分野の排出を抑える努力も重要です。最後に日常生活で私たちにできる環境アクションを紹介します。

照明や冷房、給湯機などの家電製品を見直す

家電や照明はエネルギー消費の少ない製品に切り替えることも私たちができる行動です。具体的には、電球型蛍光灯やLEDなどエネルギー消費の少ない照明に切り替える、エアコンに頼りすぎず衣服で調整する、使用時や待機時のエネルギー消費の少ない家電を選ぶといったアクションがあげられます。

ゴミ削減のために日々気配りを行う

廃棄物の処理は、日本のGHG総排出量の3.0%を占めています。日常の中でゴミを少なくする習慣を身に付けましょう。例えば、使い捨て製品や過剰包装製品を選ばない、エコバッグを持参する、循環資源が使われている製品を選ぶといった取り組みが効果的です。

節水に努める

水の供給や浄水、下水処理などにもエネルギーを使うため、節水もGHG削減につながっています。東京都水道局は、1000リットルの水道水を供給するのに245gの二酸化炭素が排出されるとしています(令和2年実測値)。

節水には、日常生活で使う水をこまめに止める心がけが大切です。例えば、歯を磨く時に30秒間水を流しっぱなしにすると約6リットルの水を使います。水はコップに汲むようにするだけで、5リットル以上の節水になります。

温室効果ガスの排出の量の少ない乗り物に乗る

移動においては、電車などの公共交通機関を使ったほうがGHG削減になります。車なら、電気を利用するハイブリッド自動車やバイオ燃料自動車などのほうがGHGを抑制できます。運転の際は、急発進や急ブレーキを少なくし、アイドリングは極力ストップするなど「エコドライブ」を心がけましょう。
top