循環型社会とは? 国内外の取り組みと私たちができること

循環型社会とは? 国内外の取り組みと私たちができること

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世界的に環境問題に対する意識が高まり、持続可能な社会を実現することの重要性も認識され始めています。持続可能で豊かな社会を次世代へ引き継ぐためには、循環型社会を作り上げていくことが不可欠です。この記事では、循環型社会の必要性や、国内外の取り組みなどについて解説します。

循環型社会とは?

循環型社会とは、天然資源の採取を可能な限り減らし効率的に利用することで、廃棄物を最小限に抑えるとともに、再生産を行って資源を持続可能(サステイナビリティ)な形で循環させながら利用していく社会のことです。

人類は産業革命以降、多くの天然資源を採取、利用することで発展を遂げ、豊かな社会を築いてきました。20世紀には、大量生産・大量消費・大量廃棄の社会システムを確立させましたが、同時に天然資源の枯渇や環境破壊、廃棄物処分場の不足などのさまざまな社会問題も生み出しました。

地球上の天然資源には限りがあります。しかし、これまでは資源を使って製品を生産し、それを消費したあとは廃棄するだけでした。高度経済成長の時期はこういった社会への問題を抱かずに経済成長を推し進めてきましたが、このような一方通行の社会システムのままでは確実に資源が枯渇し地球に住むことが難しくなるときが来てしまいます。

これらの問題を解決するために、循環型社会への変換が必要になります。個人と行政、企業が一体となってライフスタイルや経済活動、社会活動を根本的に見直さなければなりません。循環型社会の実現のために、個人と行政、企業がそれぞれの立場でできることを、速やかに進めていく必要があります。

日本国内での取り組み

循環型社会の実現のために、日本でもさまざまな法律を制定したり、官民連携のプロジェクトを行ったりしています。日本国内での取り組みについて、以下に紹介します。

循環型社会形成推進基本法

これまでも廃棄物やリサイクル対策として、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)の改正などが図られてきました。しかし、ゴミ処理場の不足や不法投棄が増大したこと、リサイクル推進の重要度が増したことなどから、ゴミ処理と資源化の2つの軸を総合的に捉える取り組みが必要になりました。

このような状況を背景に、2000年に制定されたのが「循環型社会形成推進基本法」です。この法律では、循環型社会を「①廃棄物等の発生抑制、②循環資源の循環的な利用、③適正な処分が確保されることで、環境負荷が可能な限り低減される社会」と定義しています。

さらに、廃棄物等のうち有用なものを「循環資源」と位置づけて、循環的な利用促進を求め、廃棄物・循環資源の処理の優先順位も定めています。「3R」という言葉を耳にしたことがある人も多いでしょう。これは「発生抑制(リデュース)」、「再使用(リユース)」、「再生利用(リサイクル)」の頭文字を取ったものです。

優先順位のトップが、資源を効率よく利用して廃棄物を減らす「リデュース」です。2番目が、再使用できるものは廃棄物にせず再使用する「リユース」、3番目が、再使用はできないものの原材料やエネルギー源として利用する「リサイクル」になります。さらに、再生利用はできないものの熱回収できるものは熱利用する「熱回収」、これらの段階を通して循環利用できないものは「適正処分」することが求められています。

また、国民、事業者、行政(国や地方自治体)を「排出責任者」と明示し、それぞれの責務と役割も示しています。

循環型社会形成推進基本法に基づいて、廃棄物処理法が改正され、資源有効利用促進法が制定されました。さらに、個別法として容器包装リサイクル法、家電リサイクル法、食品リサイクル法、建設リサイクル法、自動車リサイクル法、小型家電リサイクル法、グリーン購入法も制定されました。

プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律

2022年4月1日には、新たに「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック新法)」も施行されました。環境省は、この新法の下に「プラスチック製品の設計から廃棄物処理までに関わるあらゆる主体におけるプラスチック資源循環等の取組(3R+Renewable)を促進する」(令和4年版 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」)としています。
Renewable(リニューアブル)とは、「再生可能」を意味する言葉ですが、ここではプラスチックを原料とする容器包装や製品の原料を、再生木材や再生可能資源(紙やバイオマスプラスチック等)に切り替える取り組みのことです。

プラスチック新法では、3R+Renewableの実現に向けて、以下のようにマイルストーンも示しています。これに沿って再生可能な資源利用への切り替えが進んでいくことになります。
■Reduce(リデュース)
①2030年までにワンウェイプラスチックを累積25%排出抑制

■Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)
②2025年までにリユース・リサイクル可能なデザインに
③2030年までに容器包装の6割をリユース・リサイクル
④2035年までに使用済プラスチックを100%リユース・リサイクル等により有効利用

■再生利用・バイオマスプラスチック
⑤2030年までに再生利用を倍増
⑥2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入

官民連携した「循環経済パートナーシップ」

循環型社会の実現に向けて、官民が連携してスタートした取り組みもあります。それが「循環経済パートナーシップ(J4CE)」です。J4CEは、循環経済への流れが世界的に加速化する中で、国内の幅広い関係者に循環経済への理解を深め、取り組みを促進してもらうことを目指して環境省、経済産業省、経団連によって創設されました。2022年3月末時点で参加企業は124社、参加団体は16団体です。

活動内容は、循環経済に関する先進的な取組事例の収集と国内外への発信・共有、循環経済に関する情報共有やネットワーク形成、循環経済促進に向けた対話の場の設定などになります。J4CEのホームページ(https://j4ce.env.go.jp)では、取り組み事例を3R+Renewableの分類別、製品ライフサイクル別、製品別などカテゴリーに分類したうえで紹介しています。

140件ほどの取り組み事例の一例として、繊維製品の回収・再生の循環プラットフォーム「BIOLOGIC LOOP」を運営する株式会社BPLabによる、回収した繊維で植木鉢を作るビジネスモデルなどが紹介されています。

世界での取り組み

環境問題は世界各国が目指す方向を一つにして取り組まなければ、成果を上げることができません。循環型社会の実現に向けての、世界各国での取り組みを紹介します。

Vision 2050(ベルギー)

ベルギーのフランダースでは、2018年に持続可能な方法で地域の繁栄を目指すための長期戦略「Vision 2050」が採択され、循環型経済への移行が最優先事項に掲げられました。この前年には循環型経済への移行に向けた政策に関するコンセプトペーパーを発表し、「循環型調達」「循環型ビジネス」「循環型都市」を3つの柱に据えています。

「循環型調達」とは、企業や団体に生物性由来の素材や再生可能な素材を利用した製品を購入すること、製品や資源を他の団体と共有すること、製品そのものではなく製品を利用する権利を購入すること、などを促すものです。

「循環型ビジネス」は、主に建設業に焦点を当てて循環型経済に適したビジネスモデルを構築するもので、「循環型都市」は都市を実証実験場にしてエネルギー、水、食品のほか土地の有効活用や、化石燃料からバイオ燃料への転換などの実現を目指すものです。

使い捨てプラスチック流通禁止指令(EU)

EUでは2019年にプラスチック製のスプーンやフォークなどカトラリー類や皿、ストローなどの使い捨て製品を規制対象とし、廃棄物の削減を目指す法案「使い捨てプラスチック流通禁止指令」が可決されました。これにより、EU加盟国はガイドラインに則って国内法案を整備し、2021年より適応しています。

私たちにできること

冒頭で「3R」について紹介しましたが、環境問題への取り組みとして頭文字にRの入った単語を使った概念は4R、5R、6R、7R、10R、18Rまで広がりをみせています。それだけ取り組むべき事柄がたくさんあるということになるのでしょうが、まずはできることから一つずつ始めることが大切です。3Rのほか、私たちにすぐできる取り組みを紹介します。

1.Reduce(リデュース)

ごみになるものの発生を抑制するのが「リデュース」です。暮らしの中の小さな心がけひとつでできることが多く、例えばレジ袋を使わずにマイバッグ持参で買い物することもその一つです。また、詰め替え製品を選ぶこと、食べ残しを減らすこと、家庭ごみの水分をしっかり切ること、長く使える物を選ぶことなども「リデュース」になります。

2.Reuse(リユース)

使える物は繰り返し使うことが「リユース」です。例えば、洋服や子どものおもちゃなど、自分では使わなくなった物を必要としている人に譲ったり、壊れた物を修理して使ったりすることなどです。生協の一部などでは、牛乳びんや調味料、ジャムなどの空きびん、卵容器のリユースに取り組んでいますが、このような商品を購入することも「リユース」につながります。

3.Recycle(リサイクル)

製品をそのまま繰り返し使うのではなく、資源やエネルギーにして再利用する取り組みが「リサイクル」です。新聞や段ボールなどの紙類、ペットボトル、缶、びんなどの資源分別回収は「リサイクル」のためのものです。ただし、食品トレーは資源ゴミで出しても、トレーには生まれ変わらないので、スーパーなどの回収ボックスに入れた方が効率良くリサイクルできます。

4.Refuse (リフューズ)

「リフューズ」はゴミになるものを断る行動のことです。レジ袋を断るなどの行動は、些細なことに感じるかもしれませんが、一人一人が毎日「リフューズ」し続けると、大きな成果につながります。日本では一年で約300億枚ものレジ袋が使用されていて、これを一人当たりに換算すると約300枚になり、一人が1日に約1枚程度使っている計算になります。レジ袋を1枚断ることでCO2量を60g、石油の消費量を約20cc減らせます。

同様に、お弁当や総菜を購入した時のカトラリー類や過剰包装を断ってマイカトラリーを使用することや、水筒を使用してペットボトル飲料の購入を控えることなども「リフューズ」になります。

5.Repair(リペアー)

壊れたり傷んだりした物でも修理修繕して使い続けることが「リペアー」です。靴やかばん、服などを修理やサイズ直ししたり、古くなった家具をリメイクしたりすることで、ごみを減らすことができます。

6.Rental(レンタル)

物を所有せず、リースやレンタルを活用することも、ごみ削減につながります。車を所有せずレンタカーを利用する人は増えていますが、家電や家具などもレンタルを活用すると、単身赴任時など期間限定で使用した後も処分せずに済みます。

7.Return(リターン)

「リターン」は、ごみを回収することでごみの量を削減することです。携帯電話などの下取りや店頭回収の利用、外出時のゴミを家に持ち帰ることなどが「リターン」になります。「リカバー」は、清掃活動に参加したり、落ちているゴミを拾ったりすることです。
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