ESGとは?
「ESG」とは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」の頭文字を取って組み合わせた言葉です。2006年の「責任投資原則(PRI)」の中で、当時、国連事務総長だったコフィー・アナン氏が投資判断の新たな観点としてESGを発表しました。
現代は、環境・社会・ガバナンスの観点で、以下のような問題が深刻な課題となっています。投資家の間でも、財政情報だけではなく、企業が以下のような取り組みを適切に行っているかも投資先を選ぶ判断基準として定着し始めています。
Environment(環境):二酸化炭素排出量の削減、絶滅危惧種の保護、水資源の確保など
Social(社会):職場環境における男女平等、少子高齢化、ダイバーシティなど
Governance(ガバナンス):情報開示、法令順守、権利保護など
現代は、環境・社会・ガバナンスの観点で、以下のような問題が深刻な課題となっています。投資家の間でも、財政情報だけではなく、企業が以下のような取り組みを適切に行っているかも投資先を選ぶ判断基準として定着し始めています。
Environment(環境):二酸化炭素排出量の削減、絶滅危惧種の保護、水資源の確保など
Social(社会):職場環境における男女平等、少子高齢化、ダイバーシティなど
Governance(ガバナンス):情報開示、法令順守、権利保護など
SDGsやCSRとの違い
最近よく耳にする「SDGs」も環境問題やダイバーシティなどを課題とし、国際社会共通の目標となっています。SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の略で、2015年の国連サミットで採択されました。2030年までに達成すべき持続可能な開発目標として17のゴールと169のターゲットで構成されています。
ESGとSDGsはどちらも、国連から生まれた言葉という点で共通しています。SDGsは国連の加盟国が採択した目標であり、政府が主体となってすべての人が取り組むべき問題です。それに対して、ESGは民間企業を経営する中で取り組むべき課題です。つまり、企業がESGに取り組むことで、SDGsの達成に貢献できるということになります。
ESGとSDGsはどちらも、国連から生まれた言葉という点で共通しています。SDGsは国連の加盟国が採択した目標であり、政府が主体となってすべての人が取り組むべき問題です。それに対して、ESGは民間企業を経営する中で取り組むべき課題です。つまり、企業がESGに取り組むことで、SDGsの達成に貢献できるということになります。
また、企業の社会的責任という意味で「CSR」という言葉があります。CSRとは「Corporate Social Responsibility」の略で、企業が「社会的責任」を果たすための取り組みを経営に取り入れていくことを指します。企業は、環境や社会に負荷をかけながら経済活動を行っているため、文化活動や環境保護活動を通じて利益の一部を社会に還元していこうという取り組みです。
それに対してESGは、企業がビジネスを通じて環境・社会課題を解決し、自社の利益との両立を目指します。CSRはあくまでも従業員、顧客、地域、社会などから信頼を得るための企業側の目線です。それに対して、ESGは投資家の判断要素のひとつとなっているため、企業と投資家側の目線となります。
それに対してESGは、企業がビジネスを通じて環境・社会課題を解決し、自社の利益との両立を目指します。CSRはあくまでも従業員、顧客、地域、社会などから信頼を得るための企業側の目線です。それに対して、ESGは投資家の判断要素のひとつとなっているため、企業と投資家側の目線となります。
世界的にESG投資が増えている
現在世界では、ESG経営を行っている企業に対して投資を行う「ESG投資」が進んでいます。以前は、売上高や利益を重視してきました。しかし、過去には企業が短期的な財務評価に固執することで「環境汚染」「労働問題」などの不祥事を起こしたこともあります。従来の財務指標からは見えにくいリスクを回避するためにも、ESG経営を行っている企業を選択するESG投資の考えが浸透し始めているのです。ESG経営を行っている企業は、やがて持続的成長や中長期的収益につながるという判断を行う投資家が増加し、ESG投資は進んでいます。
実際、2018年における世界のESG投資額は3,100兆円でした。これは、世界の投資額の3分の1を占めています。日本におけるESG投資額も前年比45%増の336兆円となり、確実な伸びを見せています。
実際、2018年における世界のESG投資額は3,100兆円でした。これは、世界の投資額の3分の1を占めています。日本におけるESG投資額も前年比45%増の336兆円となり、確実な伸びを見せています。
消費者としてESGにどう注目すればいい?
投資家だけではなく一般人も投資することが当たり前となっています。企業がESG経営を行っているかどうかというのは、ESG投資をする際に参考になるだけではなく、企業の取り組みを確認する基準としても役立つでしょう。
こちらでは、世界各国のESG調査機関の連携によって構成されるESG投資の普及団体GSIA(Global Sustainable Investment Alliance)が、ESG投資の手法として分類した7つの投資方法をご紹介します。この基準を、投資や商品の購入の際に役立ててみてください。
こちらでは、世界各国のESG調査機関の連携によって構成されるESG投資の普及団体GSIA(Global Sustainable Investment Alliance)が、ESG投資の手法として分類した7つの投資方法をご紹介します。この基準を、投資や商品の購入の際に役立ててみてください。
1.ネガティブ・スクリーニング
ネガティブ・スクリーニング(Negative screening)では、罪ある株式(sin stocks)と呼ばれる以下のような「環境破壊につながるもの」「倫理的ではないもの」を、投資の対象から除外します。ESG投資の中で最も古くから行われてきた手法です。
・罪ある株式(sin stocks)の代表例
タバコ、アルコール、ポルノ、ギャンブル、原子力発電所、化石燃料、武器、動物実験など
・罪ある株式(sin stocks)の代表例
タバコ、アルコール、ポルノ、ギャンブル、原子力発電所、化石燃料、武器、動物実験など
2.ポジティブ・スクリーニング
ポジティブ・スクリーニング(Positive screening)とは、ESGの評価が総合的に優れた企業を選んで投資する手法で、ネガティブ・スクリーニングとは対極の立ち位置にあります。環境問題、労働環境、ダイバーシティなど、その企業のESGについて評価を行い、スコアが高い企業に積極的に投資していきます。
3.国際規範スクリーニング
国際規範スクリーニング(Norms-based screening)とは、ESGを国際的な規範をもとに判断し、投資先を決める手法です。国際的な規範の例として、国際労働機関(ILO)が定める「強制労働」「児童労働」、経済協力開発機構(OECD)が定める「経済成長」「開発・貿易」などの規範があります。最低限の基準に達していない企業は、投資対象から外します。
4.ESGインテグレーション
ESGインテグレーション(ESG integration)とは、投資判断の際に、従来用いていた「財務情報」に加え、ESGに関する情報を「非財務情報」として組み入れ、総合的に判断して投資先を決める手法です。現在、多くの投資家で広く普及している手法であり、ESG投資の中では最も一般的となっています。
5.サステナビリティ・テーマ投資
サステナビリティ・テーマ投資(Sustainability-themed investing)とは、社会や環境に関するサステナビリティ(持続可能性)に関するテーマを設定し、それに関連する企業・ファンドに投資する手法です。例えば、「再生可能エネルギー」や「環境に配慮した、持続可能な農業」に関連した企業、「エコファンド」や「水ファンド」などがサステナビリティテーマ投資として挙げられます。
6.インパクト・コミュニティ投資
インパクト・コミュニティ投資(Impact/community investing)とは、社会や環境、コミュニティに大きなインパクトを与える活動を行っている企業に対して、積極的に投資する手法です。投資先としては、非上場のベンチャーなどが該当することが多い傾向にあります。
7.エンゲージメント/議決権行使
先にご紹介した6つの方法は投資先の選定に関するものです。しかし、エンゲージメント/議決権行使(Corporate engagement and shareholder action)は、投資先との関わり方に関連します。
エンゲージメントとは、株主として積極的にESGを働きかけることです。エンゲージメントよりも強い働きかけが議決権行使です。株主総会で議決権を行使し、企業の意思決定に対して力を行使します。以前は「物言う株主」と敬遠されたこともありましたが、現在では責任ある投資家として、企業の財務情報やESG情報などの非財務情報を的確に把握し、企業がより良い方向に向かって経営するよう働きかけ、投資リターンの拡大を目指します。
エンゲージメントとは、株主として積極的にESGを働きかけることです。エンゲージメントよりも強い働きかけが議決権行使です。株主総会で議決権を行使し、企業の意思決定に対して力を行使します。以前は「物言う株主」と敬遠されたこともありましたが、現在では責任ある投資家として、企業の財務情報やESG情報などの非財務情報を的確に把握し、企業がより良い方向に向かって経営するよう働きかけ、投資リターンの拡大を目指します。
ESGへの日本企業の取り組み
最後に、私たち消費者にとって身近な3つの日本企業のESGへの取り組み事例をご紹介します。
花王株式会社
花王株式会社では、2019年にESG戦略として「Kirei Lifestyle Plan(キレイライフスタイルプラン)」を発表しました。ESG部門を立ち上げるなど、以前からESGに関する取り組みを行っていましたが、ESG活動をこれまで以上に重視しています。
ユニバーサルガイドラインに適合する新規製品・改良製品の比率を2030年までに100%にする目標を掲げた「ユニバーサル プロダクト デザイン」も大きな注目を集めました。さらに、「暮らしを変える製品イノベーション」というアクションを進め、ライフスタイルに大きく、ポジティブなインパクトを与える製品を、2030年までに10件以上提案するという目標も掲げています。
ユニバーサルガイドラインに適合する新規製品・改良製品の比率を2030年までに100%にする目標を掲げた「ユニバーサル プロダクト デザイン」も大きな注目を集めました。さらに、「暮らしを変える製品イノベーション」というアクションを進め、ライフスタイルに大きく、ポジティブなインパクトを与える製品を、2030年までに10件以上提案するという目標も掲げています。
イオン
イオンでは、「平和の追求」「人間の尊重」「地域社会への貢献」を基本理念とし、「持続可能な社会の実現」と「グループの成長」の両立を目指しています。環境に着目した取り組みも積極的に行っており、MSC認証の水産物の販売を開始しています。さらに、2020年までに全魚種で持続可能性の裏付けのあるPB商品を提供することを発表した際には、大きな話題となりました。
森永製菓
森永製菓は「差別化戦略の強化」「原材料供給の安定化」を目的に掲げ、2008年からカカオの生産国で暮らす子どもたちの支援を始めました。「1チョコ for 1スマイル」という活動で、チョコレートの売り上げ1個につき1円を寄付し、10年間で累計金額が2億円を超えています。ガーナやカメルーンなどで、子どもたちの教育支援やカカオ農家の自立支援等を行い、子どもたちの権利に関する意識啓発にも着手しています。「児童労働の撤廃」や「子どもたちの教育問題」にも大きく貢献していることで注目を集めています。
ここで挙げたのはほんの一例です。今後、投資をする際や商品選びをする際は、ESGに取り組んでいる企業かどうかという点にも注目してみましょう。
ここで挙げたのはほんの一例です。今後、投資をする際や商品選びをする際は、ESGに取り組んでいる企業かどうかという点にも注目してみましょう。