脱炭素とは? カーボンニュートラルとの違いや個人にできることを解説

脱炭素とは? カーボンニュートラルとの違いや個人にできることを解説

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脱炭素は、日本だけではなく世界中が注目しているキーワードです。同じく「カーボンニュートラル」もよく話題にされる言葉ですが、脱炭素と似たイメージがあるため、違いがはっきりしないと感じている方もいるでしょう。この記事では、脱炭素カーボンニュートラルとの違いについても説明します。

脱炭素とは?

脱炭素とは カーボンニュートラル
脱炭素とは、簡単にいえば私たちの社会活動において二酸化炭素(CO2)を排出する活動をできる限りなくすことです。二酸化炭素は、地球温暖化を引き起こす温室効果ガスのなかでもっとも割合が大きく、気候変動に直接的に影響を及ぼします。地球温暖化による気候変動は、生態系の破壊や危機的な自然災害などにつながります。そのため、今世界中で「地球温暖化を止めよう」「脱炭素を目指そう」という動きが高まっているのです。

地球温暖化を止めるため、全世界が脱炭素を達成しなくてはなりません。そのためには、二酸化炭素を発生させる石油や石炭などの化石燃料エネルギーからの脱却が不可欠です。

脱炭素社会への取り組みは、SDGsの目標に多面的につながります。直接的には、SDGsの13番「気候変動に具体的な対策を」に対する解決策となります。ほかにも、生態系や経済活動、保健衛生や福祉に至るまでSDGsで掲げられているさまざまな目標に対して良い影響を与えるでしょう。

なぜ、脱炭素が必要なの?

大気中の二酸化炭素が増えることで、地球温暖化が加速しています。それは、二酸化炭素には地表の熱が宇宙に逃げることを妨げる「温室効果」という働きがあるからです。18世紀の産業革命以降、人が排出する二酸化炭素の量は急増しています。そのため、世界の年平均気温は、産業革命(18世紀後半)以前と比べて1℃以上上昇しているのが現状です。このまま何も手を打たなければ、2100年には現在より約5℃も上昇すると予想されています。そうなれば、今よりさらに大規模な自然災害が発生するほか、生態系の変化、環境破壊の加速は避けられません。

地球温暖化が進み、気候変動が深刻化すれば、干ばつや生態系の変化によって食糧をめぐる争いが勃発する可能性もあります。また、温暖化によってマラリアなどの熱帯感染症が拡大したり、農作物の収穫量が減ったりするために、世界的な食糧不足が起こることも不安視されています。

また、石炭、石油のほか、天然ガスなどの化石燃料や原子力発電の燃料であるウランなどの天然資源は、近い将来に使い切ってなくなってしまうと予測されているため、どちらにしても今の社会の仕組みを継続することはできません。このようなさまざまな理由から、今すぐ脱炭素に向けた具体的なアクションを起こさなければならないのです。

脱炭素とカーボンニュートラルとの違い

カーボンニュートラルとの違い 
カーボンニュートラルという言葉を分解すると「カーボン=炭素」、「ニュートラル=中立」の意味を表す言葉の組み合わせだとわかります。さまざまな意味で「カーボンニュートラル」は使われていますが、日本では主に「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」ことを指しています。もう少し詳しく説明すると、温室効果ガスが排出される量と、植物が光合成をするときに吸収したり、テクノロジーによって吸気する二酸化炭素の量がプラスマイナスゼロになる状態のことです。カーボンニュートラルを実現した社会を「脱炭素社会」と呼んでいます。

現代社会において、二酸化炭素の排出量を完全にゼロにするのは容易ではありません。そこで、森林の保全や植林活動を行い、植物による二酸化炭素の吸収量を増やしたり、二酸化炭素を大気中から吸収する技術を用いたりする必要があります。そのようにして、二酸化炭素の排出量と吸収量をトータルで見たときに、「プラスマイナスゼロ」の状態にするのがカーボンニュートラルの取り組みです。

カーボンニュートラルにはさまざまな意味がある、とお伝えしました。解説した以外の意味をひとつ紹介しておきましょう。カーボンニュートラルは、植物由来のバイオマス燃料を燃やしたときに二酸化炭素排出量が実質ゼロになることも指します。バイオマス燃料を燃やしても、そもそも化石燃料ほどの二酸化炭素は排出されません。少量排出された二酸化炭素も、植物のライフサイクル全体で考えれば光合成によって吸気する二酸化炭素量と相殺されると考えられます。このことから、バイオマス燃料を用いることはカーボンニュートラルとなるのです。

世界各国の目標値

2015年に開かれた国連の会議「COP21」で結ばれた「パリ協定」では、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて+2℃より十分低く、+1.5℃におさえる努力をすることで参加国が同意しています。21世紀後半には「温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」、つまりカーボンニュートラルにするという目標も掲げられています。

そのための通過点である2030年の目標値を各国が示しているので、以下にその内容をまとめました。
カーボンニュートラル目標年 2030年時点での目標
日本 2050年 -46%(2013年度比)
アメリカ -50~ー52%(2005年比)
イギリス -68%以上(1990年比)
カナダ -40~-45%(2005年比)
フランス -55%以上(1990年比)
ドイツ
EU
イタリア
ロシア 1990年排出量の70%(-30%)
中国 2060年 ・二酸化炭素排出量のピークが2030年以前になるように目指す
・GDP当たり二酸化炭素排出量を-65%以上に(2005年比)
出典:日本の排出削減目標 気候変動|外務省
https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ch/page1w_000121.html
おおまかにいえば、世界中が2030年までに二酸化炭素排出量を半減させることを目標としています。パリ協定が結ばれるまでは、1997年に締結された京都議定書に沿ってもう少し緩やかな二酸化炭素削減目標が設定されていました。しかし、それでは地球温暖化を止められないことがわかり、パリ協定ではさらに厳しい条件が各国に課されています。

脱炭素社会を実現するための対策は?

脱炭素社会を「2050年までに達成」するという目標は、困難ですが達成しなければならない課題です。日本ではどのようにこの難題に取り組もうとしているのか、経済産業省の資源エネルギー庁の解説を元にまとめました。

1.省エネルギー・エネルギー効率の向上

省エネルギー
まず前提として、エネルギーを起源とする二酸化炭素排出量について考えるときは、「エネルギー使用量」と「エネルギー原単位」という2つの指標を見ます。エネルギー使用量はその名の通りで、エネルギーをどれだけ使うかを見るものです。そこには、電力として使用するものもあれば、熱やガソリンとして使う分も含みます。

つまり、二酸化炭素排出を減らすためにはエネルギーをできるだけ使わなければ良い、というのが一つの方向性です。いわゆる「節電」「省エネ」です。そして、少ないエネルギーで稼働させられるエネルギー効率の良い製品の開発、使用も求められています。

2.CO2排出原単位の低減

続いて、エネルギーを使うときに排出される二酸化炭素の量=「エネルギー原単位」を減らす工夫が必要です。エネルギー原単位を減らすためには、化石燃料に頼らない電源の確保が求められます。そのために、風力発電や太陽電池を活用した再生可能エネルギーの利用が有効です。また、発電所などから排出される二酸化炭素を回収して利用する「CCUS」といった技術やその技術の一つである「カーボンリサイクル」は、今後期待できる方法のひとつです。

また、非電力部門では、使用する燃料をより低炭素なものにしてエネルギー原単位を減らすことを目指しています。水素で動く自動車もその一例ですし、ほかにもバイオマス、合成燃料などを活用していく見込みです。

3.ネガティブエミッション

ネガティブエミッションを簡単にいうと、二酸化炭素排出を削減し切れない分を二酸化炭素の回収技術や植物などの活用によって、計算上でCO2排出量をマイナスにすることです。

私たちの社会活動において、省エネやエネルギー効率のアップ、エネルギー原単位の低減をしても、どうしても脱炭素化できない部門があります。そこで排出された二酸化炭素を実質ゼロにするためのネガティブエミッション技術は、幅広く開発・研究中です。バイオマス燃料を使用した際に排出される二酸化炭素を回収、地中に貯留する「BECCS」、大気中にすでにある二酸化炭素を直接回収、貯留する「DACCS」と呼ばれる技術などがその一例として挙げられます。

世界での動きは?

パリ協定で締結した目標に向けて、特にヨーロッパではさまざまな動きが目立っています。そのなかでも、大きく舵を切っている国のひとつがイギリスです。

イギリスは、2024年には石炭火力による発電を全廃させる予定です。また、環境先進国といわれるフィンランドは、2035年の二酸化炭素排出ゼロ目標を発表しており、他国よりも早くカーボンニュートラルの実現を目指しています。
また、脱炭素先進国といわれるオーストリアでは、水力発電が盛んに行われ、すでに再生利用可能エネルギーが全体の発電量の77%にも及んでいます。オーストリアでは、ほかにも生分解性以外のプラスチック袋が法律で禁止されていたり、電気自動車用充電ステーションが広く整備されていたり、公共交通機関を格安で利用できるチケットが販売されていたりと、気候変動を抑制しようとするアクションが市民レベルに広がっていることが感じられる国のひとつです。

個人にできることはどんなこと?

次に、脱炭素のために私たちのレベルでできることを考えていきましょう。

1.プラスチック製品の購入・利用を減らす

カーボンニュートラル
プラスチックは石油を原料として作られています。そのため、廃棄されて燃やされれば、二酸化炭素が排出されます。脱炭素のため、プラスチック製品を購入したり、使ったりする機会を減らしましょう。いらないレジ袋は断り、マイボトルやマイストローを持ち歩くことも有効です。

2.省エネ対策を行う

家のなかでも省エネ対策をしましょう。家電を省エネ製品に変えたり、冷蔵庫やトイレの便座温度を季節に応じて変えることも大切です。また、炊飯器やポットの保温機能をOFFにしたり、お風呂の保温時間を短くするといったことも省エネにつながります。

3.公共交通機関や自転車を利用する

「運輸部門」における二酸化炭素の排出量は全体の約2割を占めており、近年では常にTOP3に入っているのが現状です。個人でも、近所への外出であれば可能な限り自家用車の利用をやめて、公共交通機関を利用したり、自転車を利用すると脱炭素につながります。

参考:https://www.jccca.org/download/65477
全国地球温暖化防止活動推進センター

4.地産地消を心がける

食材はすべて物流を通して運ばれてきます。当然、そこでは輸送に必要なエネルギーが使われています。地産地消で地元の生産者を守りつつ、エコにもなる地産地消を心がけましょう。また、食材を購入するときにはフードロスしてしまわないように、買いすぎにも注意してください。

5.真空パック包装の食品を買う

真空パック エコライフ 脱炭素
日本でもようやく見かけるようになってきた、真空パック包装の精肉。実はヨーロッパやアジアの国々ではすでにかなり流通しています。真空パックには、メリットがたくさんあります。酸化や腐敗を抑え、長期保存にも適していますし、買ってきてそのまま冷凍保存がしやすいのも利点です。

しかし、商品の見た目などの観点で、まだまだ発砲スチロールのトレーに乗せられた商品が根強く人気があります。廃棄物の量を減らすという観点からも、積極的に真空パック包装の食品購入を検討してみると良いでしょう。
インターホールディングスでは、真空特許技術によって脱炭素社会の実現に向けた事業を展開しています。特に、99.5%の真空率を実現し何度も使用できる真空パックは、プラスチックの個包装削減だけでなく、鮮度を保てるため、フードロス削減にもつながります。

詳しくはこちらをご確認ください。
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