フェアトレードとは?メリットや商品、問題点について知ろう

フェアトレードとは?メリットや商品、問題点について知ろう

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公正な貿易を意味する「フェアトレード」は、日本でも少しずつ認知度が高まってきています。2021年、フェアトレード認証製品の市場規模は、2020年と比較して20%も増加。フェアトレード商品を支持する消費者や、フェアトレードに取り組む企業が増えてきました。しかし、そもそもフェアトレードとはどのような仕組みなのでしょうか。今回は、生活に身近な商品も関係するフェアトレードの目的や、今後の課題について解説します。

フェアトレードとは?

フェアトレード(Fairtrade)は「公正な貿易」という意味です。公正な貿易とはどのようなものを指すのでしょうか。

ここでまずは、私たちの日常を支える食品や衣類に目を向けてみましょう。

私たちの周りには、発展途上国で作られて非常に安価な価格で売られているものがたくさんあります。しかし、手ごろな価格を担保するため、原産国では生産者へ正当な対価が支払われていないという事実も存在します。また、より効率の良い生産のために、必要以上の農薬を使って現地の環境破壊や健康被害を招いている実態もあります。

良い商品を安価に購入できて生活が潤っている先進国の裏には、どんなに働いても貧困から逃れられず、環境破壊が進む途上国があるのです。これではフェア(公正)とは言えません。

このように、先進国と途上国のどちらかが損をする取引ではなく、途上国の生産者と先進国の消費者が対等な立場で貿易を行う仕組みがフェアトレードです。

フェアトレードの目的とメリット

フェアトレードの最大の目的は、利益を最優先にせず、不公正な貿易で不利益を被っている生産者の生活向上を図ることです。適正賃金の支払や労働環境の整備などを通して、フェアトレードが実現すれば「貿易を通して双方の国が豊かになる」という本来のあるべき姿を取り戻せます。

途上国の生産者が健やかな環境で安定した収入を得られるようになれば、商品の品質が一層向上するかもしれません。すると消費者の満足度は上がり、さらに活発な取引が生まれるという好循環も生まれます。

子どもが働かずに済むほか、学校や病院などの設備の建設費用がまかなえるというメリットもあります。

フェアトレードのはじまりと歴史

フェアトレードのはじまりは、第二次世界大戦後、アメリカのNGO米国メノナイト中央委員会(MCC)の取り組みだといわれています。MCCはプエルトリコの女性たちが手掛けた刺しゅう製品の輸入販売を行いました。

1950年代にはイギリスのNPOオックスファムが途上国の製品をショップで販売開始。それ以降、欧州各地に同じような取り組みが広がっていきました。

フェアトレード活動の拡大に伴い増加したのが、取り扱われる商品のバリエーションです。衣類や工芸品だけでなく、バナナやチョコレート、コーヒーなども対象となっていきました。その後、欧米にはフェアトレードショップが登場し、フェアトレードの重要性を一般の人にも知ってもらおうとする動きが活発になっていったのです。

日本でのフェアトレードの動きは、欧米に比べると遅れを取っています。1974年、日本で初めてNGOシャプラニールがバングラデシュの工芸品を販売しました。2000年に入ると、フェアトレードに積極的な姿勢を見せるスーパーや食品メーカーが増加します。このころから、ようやくフェアトレードという言葉が一般にも知られるようになったのです。

フェアトレードの基準と原則

フェアトレードが広まっていくうちに、世界で統一した基準が定められるようになりました。ここでは国際的なフェアトレードの基準を解説します。

国際フェアトレード基準

世界で統一したフェアトレードの基準が「国際フェアトレード基準」です。世界フェアトレード連盟(WFTO)が定めたこの基準は、経済・社会・環境の3原則から成り立っています。
▼国際フェアトレード基準の原則
1.経済的基準
 ・フェアトレード最低価格の保証
 ・フェアトレード・プレミアムの支払い
 ・長期的な取引の促進
 ・必要に応じた前払いの保証など

2.社会的基準
 ・安全な労働環境
 ・民主的な運営
 ・差別の禁止
 ・児童労働・強制労働の禁止など

3.環境的基準
 ・農薬・薬品の使用削減と適正使用
 ・有機栽培の奨励
 ・土壌・水源・生物多様性の保全
 ・遺伝子組み換え品の禁止など

フェアトレードの10の原則

WFTOでは、前述の国際フェアトレード基準を「10の原則」という表現でも提示しています。

1.生産者に機会を提供する
仕事やお金を得る機会、経済的な自立の機会を提供する

2.事業の透明性と説明責任
誰に対しても数字や言葉で明確に説明できる事業を行う

3.公正な取引の実行
利益を最優先せず、互いに持続可能な取引を実行する

4.公正な価格
地域の基準で公正な取引価格や、適切な協議のもと合意して決められた価格で取引する

5.子どもの労働、強制労働の否定
国連「子どもの権利条約」や子どもに関連する法律を遵守し、子どもの権利を守る

6.差別がないこと、男女平等、女性の地位向上、結社の自由
雇用や賃金などにおいて、人種、階級、国籍、性別、宗教などのあらゆる面で差別しない

7.安全で健康的な労働環境
ILO(国際労働機関)の労働条件を満たし、生産者の安全と健康を守る職場を提供する

8.生産者のキャパシティ・ビルディングを支援
生産者が技術や管理・経営能力などを得る後押しをする

9.フェアトレードの推進
フェアトレードを積極的に進めていく

10.環境への配慮
自然環境を守り、エネルギー消費や二酸化炭素の排出が少ない生産をするよう配慮する

フェアトレードマーク(認証)とは?

フェアトレードが世界的に広まるにつれ、フェアトレード商品がより認知されやすくなるよう、認証ラベルを作る動きも拡大しました。フェアトレードマークはいくつかありますが、大きく3種類に分類できます。

1.国際フェアトレード認証ラベル
世界的にもっとも認知されているフェアトレードラベル。該当の商品が国際フェアトレード基準を満たしている証。

2.WFTO参加団体認証ラベル
商品ではなく、フェアトレード活動を実施している団体に付与されるラベル。(商品にマークを付けるには別途認証が必要)

3.その他のラベル
フランスのFFL認証やフェアトレードUSAの認証など、さまざまな団体や企業、国がラベルを用意している。

フェアトレード商品とは?

フェアトレード 商品
フェアトレードの認証を受けている商品は、飲食物だけではありません。綿や布、化粧品など多岐に渡ります。普段使っているものがあれば、フェアトレード商品に切り替えてみるのも良いでしょう。
▼国際フェアトレード認証製品の例

(飲食物)
コーヒー
紅茶
カカオ
スパイス・ハーブ
はちみつ
果物
加工果物
サトウキビ糖
野菜
ワイン
オイルシード・油脂果物
ナッツ

(食品以外)
切花
コットン製品
衣類・ファッション小物
スポーツボール
化粧品
ミツロウ製品

フェアトレードチョコレート

率先してフェアトレード商品を選びたい品目の一つが「チョコレート」です。チョコレートの原材料であるカカオや砂糖などの生産者のなかには、正当な収入を得られていない人がたくさんいます。

貧困により、大人も子どもも長時間労働をするしかない人たちが多く存在します。貧困から抜け出したいからという理由で、カカオを効率よく栽培するために、身体に害のある農薬を使うケースもあります。

近年では、こういった問題を解決するためにフェアトレードによりカカオや砂糖などの原材料を適正な価格で取引し、チョコレートを作る企業が増えてきました。生産者がさいなまれている貧困や健康被害の問題の解決を目指しています。

フェアトレードコーヒー

フェアトレード 商品
実は、コーヒー豆生産国でも不公正な取引が横行してきました。その理由の1つは、やはり途上国という環境が影響しています。

コーヒー豆の原産国はほとんどが発展途上国であり、カカオ生産者と同様に正当な収入を得られず、貧困に喘ぐコーヒー豆農家はたくさん存在します。貧困層の生産者たちは生活が不安定なため、子どもを学校に行かせることができない農家も多いのです。

前述の国際フェアトレード基準には、生産者の生活を支えつつ生産活動を持続できるように、「フェアトレード最低価格」が定められています。国際市場価格が下落したとしても、輸入者はこの最低価格以上の価格で取引しなければいけません。また、「フェアトレード・プレミアム」という資金を、フェアトレード最低価格に上乗せして支払う基準もあります。

フェアトレードコーヒーは、これらの基準を満たして生産、製造されたコーヒーです。日ごろからコーヒーを飲む方は、ぜひフェアトレード認証マーク付きのコーヒーを購入してみてください。

フェアトレードの問題点と課題

貧困や人権、環境の問題において良いことばかりのように思えるフェアトレードですが、消費者にとっては問題点や課題があります。一つは商品価格がやや高くなることです。従来の原材料価格よりも高い価格で仕入れなければならないため、その分商品価格もアップします。

フェアトレード商品の品質が安定していない点も課題の一つです。とくに手作りのフェアトレード商品は、ものによって仕上がりに差があるものも少なくありません。ほかの商品と比較して満足度が下がると、フェアトレード商品は売れなくなってしまいます。

ただし、今後フェアトレード商品の購入者が増えれば、市場価格が下がって値段が安くなるかもしれません。また、生産者の技術支援が適切に行われれば品質の安定化も図れます。

フェアトレードはSDGsにも貢献する

フェアトレードは、国連の定める持続可能な開発目標(SDGs)にも深く関係しています。貿易の仕組みが公正になれば、発展途上国の生産者や労働者が貧困から脱し、自らの力で持続可能な社会を生み出していけるためです。

フェアトレードはSDGsで掲げられている17の目標のほぼすべてに関係しているといわれています。とくに関係が深いとされる目標が以下の8つです。

目標1.貧困の撲滅
目標2.飢餓の撲滅と持続可能な農業の促進
目標5.ジェンダー平等
目標8.安全安心な労働環境と、強制労働・児童労働の撲滅
目標12.持続可能な消費と生産
目標13.気候変動への対策
目標16.平和で包摂的な社会の促進
目標17.グローバル・パートナーシップの活性化

世界の平等や持続可能な発展に大きく寄与するフェアトレードですが、今すぐに生活用品すべてをフェアトレード商品にするのは困難です。フェアトレード商品を買えるお店は日本でも増えているため、まずは認証マークの付いた商品を購入してみることをおすすめします。たった1回の買い物でも、フェアトレード普及への大きな一歩となるでしょう。
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