カーボンフットプリントとは?意味や計算方法、プログラムについて

カーボンフットプリントとは?意味や計算方法、プログラムについて

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私たちが購入する製品・サービスは、製造から廃棄されるまでに二酸化炭素などの温室効果ガスを発生させています。このような一連の流れ(ライフサイクル)におけるCO2排出量を可視化する仕組み「カーボンフットプリント」をご存じでしょうか。昨今、商品のライフサイクルの工程ごとにCO2排出量を換算するカーボンフットプリントが注目されていますが、カーボンフットプリントとは何か、私たちの生活にどのような影響を与えるのかについて解説します。

カーボンフットプリントとは?

カーボンフットプリント(CFP=Carbon Footprint of Products)は「炭素の足跡」と直訳されます。具体的には、製品・サービス(商品)が生産・流通・販売・使用・廃棄・リサイクルされるまでの「ライフサイクル」を通じて、排出される温室効果ガス量をCO2に換算し商品に表示する仕組みです。

広義には、商品以外の温室効果ガス排出量の換算を指す場合もありますが、国内においては商品を対象としている場面が多いでしょう。

カーボンフットプリントの計算方法

カーボンフットプリントはどのように算出されているのでしょうか。通常、対象となる商品種別ごとの「共通計算ルール」を選び、そのルールに則り計算を進める方法が一般的です。そのために、対象となる商品における材料調達から廃棄までの間に、どのような工程があるのか精査しなければなりません。

続いて、工程ごとに下記計算式をもとにCO2排出量を算定します。
「CO2排出量=Σ(活動量i × CO2排出原単位i)」
※iはライフサイクルの工程を表します。

最後に、算出した全工程における排出量を合計します。すると、商品が製造され、消費者が購入したのち使用し廃棄に至るまで、どれだけのCO2が排出される商品か算定できるのです。

カーボンフットプリントの目的と重要性

私たちは普段の生活のなかで、温室効果ガスの排出量を目視できません。当然、購入した商品がどれだけのCO2を排出するのかを知ることは困難です。しかし、カーボンフットプリントにより、企業や消費者はCO2排出量を「見える化」し、削減行動につながる「気づき」を得られます。

例えば、各工程におけるCO2排出量を削減するため企業間で協力したり、消費者が自ら低炭素な商品を選んだりと、意識の改革につながるでしょう。

なぜ今注目されているの?

カーボンフットプリントには、地球温暖化対策への期待が込められています。

CO2の排出量削減が地球温暖化対策になることは、皆さんご存じの方が多いかと思います。しかし現在、CO2の空気中濃度は産業革命以来急速に進み、このままではさらなる気温上昇は避けられません。

そのため、CO2排出量削減は全世界的な急務であり、様々な企業がCO2削減の取り組みをしています。その1つが、カーボンフットプリントです。

日本でも、2030年度には温室効果ガス排出量を46%削減(2013年度比)することを表明しています。つまり、日本企業もCO2を削減する責任があり、カーボンフットプリントの表示が求められているのです。

カーボンフットプリントのメリット

カーボンフットプリントによって、企業や私たち消費者は具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここからは企業側と消費者側それぞれに対してのメリットを紹介します。

企業側へのメリット

ライフサイクルの各工程におけるCO2排出量を明確にすることで、具体的な対策がしやすくなります。また環境省や経済産業省などの省庁もカーボンフットプリントを推進しており、コスト面・経営面での効果も期待されるポイントです。

例えば、CO2排出削減により「CO2排出量に応じた税金・排出権取引」など、カーボンプライシングのコストカットができます。また、カーボンフットプリントへの取り組みは、消費者へのアピールにもなります。環境問題に取り組む企業として競争力が高まり、経営面でも優位です。

私たち消費者へのメリット

消費者はカーボンフットプリントの表示により、CO2の排出量を把握できます。そのため、環境に対する意識が高まり、今まで環境問題に興味がなかった層が関心を持つきっかけになるでしょう。

また、すでに環境問題への高い意識を持っている消費者であれば、環境負荷の少ない商品を選択できるようになる点もメリットです。CO2排出量がより少ない商品を選ぶことで、自分でも低炭素の行動に取り組みやすくなります。

カーボンフットプリント表示に取り組む企業と商品

具体的に、どのような企業がカーボンフットプリントの表示に取り組んでいるのでしょうか。カーボンフットプリントの表記に取り組んでいる企業と、商品の事例を紹介します。

コクヨ

文房具の製造、販売をするコクヨグループでは、低炭素社会実現に向けた取り組みが盛んです。例えば、自社のオフィス・工場に太陽光パネルやLEDライトを導入、商品の製造過程の運用改善に取り組んでいます。

その活動の一つが「チューブファイル」へのカーボンフットプリントの表示です。チューブファイルはエコに取り組むコクヨの姿勢を象徴する商品として、間伐材やバイオマス原料の使用、脱プラスチックなど環境に配慮した工夫がされています。

日本ハム

ハム、ソーセージにはじまり様々な食品を製造・販売している日本ハムグループでは、商品のライフサイクルのなかで、とくに環境負荷の大きい部分はどこか洗い出しCO2削減に取り組んでいます。

その一つが、「森の薫り あらびきウインナー」「森の薫り ロース」「森の薫り ハーフベーコン」へのカーボンフットプリントの表記です。また対象商品以外でも、パッケージ部分において環境配慮素材への切り替えやパッケージ形状の工夫がされています。

カーボンフットプリントコミュニケーションとは?

カーボンフットプリントを普及させるためには、企業と消費者の協力およびコミュニケーションが重要だといわれています。そのためにも、商品のライフサイクル全体で排出されるCO2を「見える化」し、分かりやすくアピールする必要があります。

この活動はカーボンフットプリントコミュニケーション(CFP)と呼ばれ、企業は消費者と双方向のコミュニケーションが取れるようにCFP制度を通じた様々な取り組みを行わなければなりません。

カーボンフットプリントコミュニケーションプログラムの目的と仕組み

カーボンフットプリントコミュニケーションプログラムとは、カーボンフットプリントへの取り組みの活性化を目指す計画です。企業は本プログラムに参加し、カーボンフットプリントを算定することで、認定マークを取得できます。参加への宣言は公式ホームページに公開されます。
企業はCO2削減という社会的責任に取り組んでいることを表明でき、消費者はそういった企業の商品を選ぶことが容易になるという仕組みです。

カーボンフットプリントに関する今後の課題

日本におけるカーボンフットプリントの課題点として指摘されているのは、消費者に浸透していないが故の費用対効果の低さです。

カーボンフットプリントを算出するためには、多大な手間と予算を必要とする一方で、取り組みが消費者に伝わらず、購入につながらないという事態が発生しています。また、カーボンフットプリントの周知が本当に購買行動に結びつくのか、疑問の声も上がっています。

しかし、排出するCO2を「見える化」するためのツールとして、カーボンフットプリントが非常に分かりやすい指標であることは事実です。カーボンフットプリントの先駆けとなったイギリスでは、市民権を得ている考え方となっています。つまり、日本でもカーボンフットプリントへの理解を広められれば、低炭素社会の実現につながる可能性は十分にあり得るのです。
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